開幕・続報🇯🇵 東京・六本木(あす9/9開幕)
ダ・ヴィンチは、あすから六本木にいる
#11で予告した「ルーヴル美術館展 ルネサンス」が、いよいよあす9月9日に国立新美術館で開幕する(〜12月13日)。ルーヴルからの来日展は3年ぶり。約50点で15〜16世紀を巡る構成で、目玉は初来日のダ・ヴィンチ《美しきフェロニエール》——輪郭を線で囲まず明暗を溶け合わせる、あの技法の実物だ。見る前の予習なら回廊が使える:奥行きの科学は「遠近法」、そして今週開室したばかりの「油絵の誕生」では、ダ・ヴィンチと同時代の画家たちが使った「透明な層を重ねる」技をタップで体験できる。仕組みを知ってから見る肖像画(人物を描いた絵。地位や人柄まで写す“情報メディア”だった)は、見え方がまるで違う。
💡 話せるタネ会期は12月まで3ヶ月ある。あわてなくていいが、覚えておきたいのは「一枚を10分見る人」になれるチャンスだということ。50点なら全部見ても足が残る——大型展の「点数が少ない」は、実は贅沢の印だ。
開館予告🇯🇵 東京・皇居(11/3全面開館)
皇居の中の美術館が、8倍になって開く
皇居三の丸尚蔵館——皇室に受け継がれた美術品を収める美術館が、11月3日にグランドオープンする。展示面積は従来の約8倍。開幕記念展では正倉院宝物が皇居内で初めて公開される。そして最大の目玉は来年——伊藤若冲の《動植綵絵》全30幅が、2027年2月4日〜3月14日に一堂に並ぶ。鶏も貝も植物も、極彩色で描き尽くした若冲の代表作で、30幅そろっての展示は国内では約10年ぶり、2021年の国宝指定後では初めてだ。あわせて円山応挙ら近世京都の花鳥画(花・鳥など生きものを主題にした絵画ジャンル。東アジアで独自に発達した)の名手たちも並ぶ。
💡 話せるタネ《動植綵絵》は若冲が約10年かけて描いた30幅セット。1幅ずつでも傑作だが、全部並ぶと「一人の画家の10年」を一室で見ることになる。来年2月の手帳に、いまのうちに丸を。
里帰り🇯🇵 岡山(〜12/6)
ベルリンの夢二が、90年ぶりに帰ってきた
「夢二式美人」で一世を風靡した画家・竹久夢二が、1933年にベルリンで描いた日本画《南枝早春(なんしそうしゅん)》が、故郷・岡山の夢二郷土美術館で初公開されている(創立60周年特別展「夢二とドイツ」・9月4日〜12月6日)。当時の夢二はベルリンの美術学校で日本画を教えており、滞在を支えた外交官に本作を贈った。その家で約90年、大切に保管されたのち、遺族から美術館へ寄贈——文字どおり門外不出だった一枚だ。大正ロマン(大正期の、西洋と日本が混ざり合う抒情的な文化・美意識)を象徴した画家の、最晩年の到達点が見られる。
💡 話せるタネ夢二は「画壇」に属さず、雑誌・楽譜の表紙や商品デザインで大衆に届いた人——今でいうイラストレーターの先駆けだ。その人が最後にたどり着いたのが、異国で描く一枚の日本画だった。
まもなく終了🇯🇵 東京・元赤坂(〜9/15・残り1週)
国宝の宮殿で藤田嗣治——見られるのは、あと1週間
国宝・迎賓館赤坂離宮で開催中の「藤田嗣治生誕140周年特別参観」が9月15日で終わる。展示されているのは、1935年に銀座の洋菓子店コロンバンのサロン天井を飾るために描かれた大画面のフランス風俗画。戦時中の疎開を経て1974年から迎賓館が所蔵してきた計6点で、うち2点はふだん非公開の「花鳥の間」での特別展示だ。藤田はエコール・ド・パリ(20世紀前半、パリに集った外国人画家たちの総称。モディリアーニ、シャガールら)で最も成功した日本人画家——その筆が、洋菓子店の天井のために描いた「やわらかなフランス」を、本物の宮殿建築の中で見る。
💡 話せるタネ「絵は美術館で見るもの」になったのは実は最近で、天井画・壁画・家具——絵はずっと建築の一部だった。宮殿で見る天井装飾は、その記憶を体で思い出させてくれる。
現代美術🇯🇵 東京・清澄白河(〜12/13)
1930年代の台湾に、こんなに新しい詩と絵があった
東京都現代美術館で「共時的星叢—時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」が開幕した(9月5日〜12月13日)。起点になるのは風車詩社(1930年代の台湾・台南で結成された前衛的な詩のグループ。日本や西洋の新しい芸術運動といち早く共振した)。植民地期の台湾と日本のあいだで、詩・絵画・写真・映画がどう国境を越えて響き合ったかを、同時代の資料と作品でたどる展覧会だ。発売中の『美術手帖』10月号も台湾の現代美術を特集しており、この秋は「台湾から見る」が合言葉になりそうだ。
💡 話せるタネ美術史は「パリ→東京」のような一方通行で語られがちだが、実際は台南にもソウルにも、同じ時代の空気を吸って新しいものを作る人たちがいた。「中心と周縁」ではなく「同時代の星座」として見る——展覧会名の「星叢」はその宣言だ。
ゲーム🌐 オンライン(今夜23:00配信)
40年続く冒険の、次の一手が今夜わかる
任天堂が今夜9月8日23時、「ゼルダの伝説40周年 Direct」を配信する(約30分)。1986年の初代から40年——予告されているのは、Nintendo Switch 2版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の詳細と、ゲーム以外の40周年の取り組みだ。あす9日23時には通常のNintendo Directも控える2夜連続。『時のオカリナ』(1998)は「3D空間の冒険」の文法を作ったと世界中で語り継がれる一本で、そのゲームデザイン(ルール・操作・レベル構成など、遊びの体験そのものを設計する仕事)は今のオープンワールドにも流れ込んでいる。
💡 話せるタネ40年続くシリーズの強さは、キャラクターでも映像でもなく「謎を解いて世界が開ける」という体験の設計にある。絵・音楽・UI・物語——ゲームは美術の総合格闘技。進路の選択肢として見ても大きな産業だ。
建築と保存🇯🇵 香川・高松(調査9/15〜10/14)
「船の体育館」の解体に、裁判所が待ったをかけた
丹下健三が1964年に設計した旧香川県立体育館——反り返った屋根が和船を思わせ「船の体育館」と呼ばれてきた名建築の解体工事が、1ヶ月間中断されることになった。解体費への公金支出をめぐる住民訴訟のなかで、高松地裁が争点である耐震性を調べる現地調査を認めたためだ(9月15日〜10月14日、コンクリート強度や地盤を調査)。建築家らでつくる民間の再生委員会は耐震補強のうえホテルなどへの保存活用(歴史的建築を壊さず、用途を変えて使い続けること。コンバージョンとも)を提案し、県は倒壊の恐れを理由に解体方針を維持している。調査の結果が、議論の土台を変えるかもしれない。
💡 話せるタネ「古い建物を残すか壊すか」は感情論になりがちだが、今回の中断は「まずデータを取ろう」という決定だ。保存の議論は、愛着と数字の両方でできている——これは絵画の修復でも、まったく同じ構図だ。