追悼🇯🇵 東京・新宿ほか
水玉の女王が、97年の生涯を閉じた
前衛芸術家の草間彌生さんが8月14日、多臓器不全のため亡くなった。97歳。事務所の公式発表によれば、亡くなる直前まで絵筆を手放さなかったという。1929年、長野県松本市生まれ。幼い頃から水玉や網目が視界いっぱいに広がる幻覚に悩まされ、それを描くことで自分のものにした——弱さを作風に変えた人だ。1957年に単身渡米し、ニューヨークで前衛の最前線を走り、鏡と光で“無限”を体験させる インスタレーション(空間そのものを作品にする表現)《インフィニティ・ミラー・ルーム》は世界中の美術館で行列を生んだ。作品といまも会える場所がある。草間彌生美術館(新宿区弁天町・完全予約制、チケットはWeb販売のみ)だ。
💡 話せるタネ水玉は“かわいい”から選ばれたモチーフじゃない。見えてしまう幻覚を、描くことで飼いならした結果だ。ちなみに草間彌生美術館は、東洋美術学校から歩いて行ける距離にある。予約して、静かに見送りに行こう。
建築と古典🇯🇵 東京・六本木(8/28開幕)
800年前の“ミニマル生活”を、建築家が読み直す
六本木の21_21 DESIGN SIGHTで 「方丈記に学ぶ —生きるを編み直す小さな建築—」 が今日8月28日に開幕する(〜2027年1月11日)。『方丈記』は約800年前、鴨長明が書いた随筆。災害続きの都を離れ、約3メートル四方(=方丈)の小さな組み立て式の住まいで暮らした記録だ。持たない・小さい・移動できる——現代の ミニマリズム(要素を最小限まで絞り込む考え方)を800年先取りしたような暮らしを、現代の作り手たちが建築やデザインの視点で読み直す。
💡 話せるタネ「小さい家」は我慢じゃなく設計思想。3m四方に何を残して何を捨てるかは、そのままデザインの問いになる。古典は“教養”じゃなく、アイデアの鉱脈として読める。
グラフィック🇯🇵 東京・銀座(9/4開幕)
ポスターは、役目を終えたあと何になる?
銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で、グラフィックデザイナー田中義久の個展 「田中義久 ARCHIVE / ACHIEVE」 が9月4日に開幕する(〜10月21日)。テーマは、デザインの過程や刷り上がった印刷物が、どう保存され、分類され、展示されていくのか——つまりデザインの アーカイブ(作品や資料を体系立てて保存し、あとから使える状態にする仕組み)そのものを検証する展覧会だ。納品して終わり、ではない。仕事の痕跡をどう残すかまでがデザイナーの視野に入ってきている。
💡 話せるタネラフ、色校正、ボツ案——完成品の“手前”にある紙たちは、捨てればゴミ、残せば思考の記録。スケッチブックを取っておくことも、立派なアーカイブの第一歩だ。
物語と絵🇯🇵 東京・丸の内(9/19開幕)
江戸のヒーロー画は、中国の小説から生まれた
東京駅の駅舎内にある東京ステーションギャラリーで 「水滸伝」展 が9月19日に開幕する(〜11月8日)。『水滸伝』は明の時代に成立した中国の長編小説で、108人の豪傑が集う“キャラクター大量投入型”物語の元祖。江戸の浮世絵師・歌川国芳はこの豪傑たちを 錦絵(多色摺の浮世絵版画)に描いて大ヒットさせ、出世作にした。本展は北宋〜清の中国美術から江戸〜現代の日本美術まで、この物語が生んだイメージの系譜を横断する。高校・大学生1,100円(9/18までの前売なら900円)、中学生以下は無料。
💡 話せるタネ「キャラが多すぎて覚えられない物語」を、一人ずつ絵にして売る——国芳がやったのは、今でいうキャラクターデザインとトレーディングカードの発明に近い。推しキャラ文化の先祖は江戸にいた。
写真🇯🇵 東京・竹橋(〜9/13・まもなく閉幕)
50年撮り続けたシリーズが、ついに完結する
東京国立近代美術館の 「杉本博司 絶滅写真」 が9月13日で閉幕する。国内の美術館では21年ぶりという写真中心の大規模個展で、1970年代後半から現在までの 銀塩写真(フィルムと印画紙に、光と化学反応で像を焼き付ける方式)約60点を3章・13シリーズで展観。博物館のジオラマを本物の風景のように撮る代表シリーズ〈ジオラマ〉は、初公開の新作2点をもって50年の歴史に幕を下ろす。デジタルではなく、消えゆく“銀塩”という技術で「絶滅」を撮り続けた作家の集大成だ。
💡 話せるタネフィルム写真は「古い技術」ではなく「別の技術」。光と薬品で像が浮かぶ仕組みは、回廊
「写真のはじまり」(無料)で実際に“現像”を体験できる。仕組みを知ってから見る銀塩は、解像度が違う。
プロダクト🇯🇵 東京・京橋(〜10/4)
“真面目じゃない”デザインが、世界を変えた
京橋のアーティゾン美術館で 「エットレ・ソットサス —魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」 が10月4日まで開催中。ソットサス(1917–2007)はイタリアの プロダクトデザイン(量産される道具や機器のデザイン)の巨人で、オリベッティ社の真っ赤なポータブルタイプライター「ヴァレンタイン」で名を馳せ、1981年にはデザイン集団「メンフィス」を旗揚げ。役に立つ・効率的、が正義だった時代に、カラフルで遊び心むきだしの家具や食器をぶつけて世界のデザインの流れを変えた。
💡 話せるタネ「便利」だけがデザインの正解じゃない。使う人の気分を上げる・思わず笑う——ソットサスは“機能”に“魔法”を足した人。地味に整えるだけがデザインだと思っていたら、この展示は良い薬になる。
版画🇯🇵 東京・上野(〜9/23)
レンブラントは、“刷る絵”で世界に届いた
上野の国立西洋美術館で 「版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト」 が9月23日まで開催中。17世紀オランダの巨匠レンブラントは油絵の名手として知られるが、生前ヨーロッパ中に名を広めたのはむしろ版画だった。銅板を酸で腐食させて線を刻む エッチング(銅版画の代表的な技法。ペンのような自由な線が刷れる)を極め、光と闇のドラマを“複製できる絵”に閉じ込めた。1枚しかない油絵と違い、版画は刷って増やして遠くまで運べる——巨匠のもうひとつの顔は、自分の絵を世に届ける発信者だった。
💡 話せるタネ「原画は1枚、でも作品は世界中に」——版画は美術史上最初の“拡散ツール”だ。刷って増やす発明がどれほど世界を変えたかは、回廊
「紙と印刷のはじまり」(無料)で体験から。