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TOBI STUDY | 東美スタディ ・ 今週のアートシーン

#11レオナルドから、まちの芸術祭まで

2026年8月25日号 ・ 秋の開幕ラッシュ ・ 3分で読める
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この秋、日本の美術館とまちが一斉に動きだす。六本木にはレオナルド・ダ・ヴィンチの肖像画がはじめて来日し(9月9日〜)、群馬・前橋では“第一回”を名乗る国際芸術祭が9月に産声をあげる。清澄白河では“光そのもの”を彫刻にした作家の回顧展が今週末(8月29日)に開幕、南青山ではアジアのやきもの110点が、10月の白金台にはマリメッコの花柄が待つ。六本木で服のデザイナーがピカソを飾りつけた話題展は今週末以降がラスト、そして台湾の“知られざる近代美術”も上陸する。夏の祭のあとにやってくる、秋の大物7つを3分で。

光の彫刻🇯🇵 東京・清澄白河(8/29開幕)

光そのものを、彫刻にした人がいた

戦後日本で活躍した造形作家・多田美波(1924–2014)の没後初となる大規模回顧展 「多田美波―光、凛と ゆれる」 が、東京都現代美術館で8月29日に開幕する(〜12月6日)。金属やアクリルで光を反射・屈折させる抽象彫刻から、天井や壁そのものを光でデザインした 光造形(照明を造形作品として空間に組み込む手法)まで、約70年の歩みを約70点+スケッチや写真で追う。絵の具や粘土だけが画材ではない——光・反射・空間そのものを“素材”にした仕事だ。

💡 話せるタネ「何で作るか」は無限にある。多田にとっての画材は“光”だった。作品と、それを照らす光の境目が消えたとき、空間まるごとが作品になる。
巨匠の初来日🇯🇵 東京・六本木(9/9開幕)

ダ・ヴィンチの絵が、はじめて日本の壁にかかる

パリのルーヴル美術館から名品50点余がやってくる 「ルーヴル美術館展 ルネサンス」 が、国立新美術館で9月9日に開幕する(〜12月13日)。目玉は、レオナルド・ダ・ヴィンチの《女性の肖像(美しきフェロニエール)》の 初来日。15〜16世紀ヨーロッパで花開いた ルネサンス の肖像画を代表する一枚で、輪郭を線で囲まず煙のようにぼかす技法 スフマート(sfumato。明暗を溶け合わせて立体感を出すダ・ヴィンチの得意技)が使われている。教科書で見たあの技を、実物の前で確かめられる約3ヶ月。

💡 話せるタネあの“柔らかさ”は偶然じゃない。線ではっきり囲まず、明るさと暗さをじわっと溶かす——理屈を知ってから見ると、名画の見え方が変わる。予習は回廊 「遠近法」(無料)で、ルネサンスが発明した“奥行きの科学”から。
新しい芸術祭🇯🇵 群馬・前橋(9/19開幕)

群馬・前橋で、まちぐるみの芸術祭が産声をあげる

群馬県前橋市の中心市街地を舞台に、「第一回 前橋国際芸術祭2026」 が9月19日に開幕する(〜12月20日)。テーマは 「めぶく。Where good things grow.」。空き店舗や広場、通りそのものが会場になり、国内外の作家の作品がまちに点在する“第一回”だ。こうした大型の芸術祭では、全体の方向づけと作家選びを担う 芸術監督(アーティスティック・ディレクター=展覧会や芸術祭を総合的に企画・演出する役割)の存在が、色を決める。作品を「作る人」だけでなく、「場をつくる人」の仕事が見えてくる。

💡 話せるタネ芸術祭の主役は、実は作品だけじゃない。どの作家を、まちのどこに置くか——“編集”するのが芸術監督。美術の仕事は「描く」の外側にも広がっている。
やきもの🇯🇵 東京・南青山(〜10/12)

土と炎の技を、110点で旅する

根津美術館(南青山)で 「やきもの名品紀行 中国・日本・朝鮮半島」 が10月12日まで開催中。約2,300件におよぶ館蔵の陶磁器から選りすぐった名品110件を、3つの展示室で中国・日本・朝鮮半島とめぐる構成だ。器の表情を大きく左右するのが、表面をおおうガラス質の膜 釉薬(ゆうやく。焼く前に塗り、高温でガラス化して色とツヤを生む)——同じ土でも、この一塗りと火加減で色も質感も変わる。“産地ごとの美意識”を、手のひらサイズの立体で読み比べられる。

💡 話せるタネ器のきれいな色は、絵の具じゃなく“溶けたガラス”。釉薬と炎が生む色は、狙って出すのが難しいぶん、二つとない。予習は回廊 「顔料と色の歴史」(無料)で、“色はどこから来るのか”を。
デザインと模様🇯🇵 東京・白金台(10/3開幕)

あの大胆な花柄は、どうやって生まれるのか

フィンランド発のブランド、マリメッコの約10年ぶりの大規模展 「マリメッコ展 模様のちから」 が、東京都庭園美術館で10月3日に開幕する(〜12月20日)。ドレスやファブリック、原画を通して、あの大胆な柄がどう作られ、布や服になって世界に届くまでを見せる。1枚の絵を、布のために“繰り返せる模様”へ設計する仕事が テキスタイルデザイン(布地のための模様・柄のデザイン)だ。イラストが「1枚で完結」しない、その先の職能がまるごと展示になる。

💡 話せるタネ絵を描く力と、布の柄を作る力は、地続きで別物。“無限に繰り返してもつなぎ目が見えない”よう設計するのがコツ。予習は回廊 「日本の家紋」(無料)で、日本の“繰り返し模様”の文法から。
絵画×デザイン🇯🇵 東京・六本木(〜9/21)

ピカソの展示を、服のデザイナーが飾りつけた

パリ国立ピカソ美術館の所蔵作品に、英国のファッションデザイナー、サー・ポール・スミスが会場構成で応える 「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」 が、国立新美術館で9月21日まで開催中(今週末以降がラスト)。同じピカソでも、壁の色・照明・作品の並べ方——つまり 会場構成(展示空間そのもののデザイン。何をどこにどう見せるかの設計)を変えると、絵の印象は大きく変わる。“飾り方”がもうひとつの作品になる、デザインとアートの掛け算だ。

💡 話せるタネ作品そのものが同じでも、「どう見せるか」で体験は激変する。額装・壁・動線・光——会場構成は、美術館やギャラリーの立派なデザイン職だ。9/21で終わるので急ぎたい人向け。
アジアの近代美術🇯🇵 東京・清澄白河(9/5開幕)

台湾に、こんな近代美術があった

台湾の近代美術を日本で本格的に紹介する初の大規模展 「共時的星叢──時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」 が、東京都現代美術館で9月5日に開幕する(〜12月13日)。1930年代の台湾で結成された前衛詩グループ「風車詩社」を描いた映画を起点に、近代台湾の美術約200点+資料に、日本の作品も重ねて展示。西洋だけでなく、同じ時代のアジアにも独自の モダニズム(20世紀前半に各地で花開いた、伝統から離れた新しい表現の運動)が育っていた——その事実を、絵で確かめられる。

💡 話せるタネ「近代美術=ヨーロッパ」で止まりがち。でも同じ頃、台湾でも東京でも、若い作家たちが“新しい絵”を模索していた。美術史は、思っているより多くの土地で同時に動いている。
今週はここまで。
巨匠の初来日も、まちで始まる芸術祭も、器の釉薬も、布の花柄も——“つくる”の入口は、絵を描くことだけじゃない。光を、場を、模様を、飾り方を設計する仕事が、この秋いっせいに顔を出す。気になった扉を、ひとつ現地で開けてみよう。次号は金曜の朝に。
編集:東洋美術学校 | study.to-bi.ac.jp ・ 全記事 出典リンク付きの要約です
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