映画とマンガ🇮🇹 ヴェネチア(9/2開幕)
「描き続ける物語」が、世界最古の映画祭で審査される
第83回ヴェネチア国際映画祭があす9月2日に開幕する。コンペティション部門に日本から2作——是枝裕和監督『ルックバック』と塚本晋也監督『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が並ぶ。『ルックバック』は藤本タツキの短編マンガが原作で、マンガを描き続けるふたりの少女の物語。2024年のアニメ映画化に続き、今回は出口夏希と蒔田彩珠の主演で実写になった。是枝はコンペ選出が7年ぶり4回目、塚本は8年ぶり4回目。世界三大映画祭(ヴェネチア・カンヌ・ベルリン。ヴェネチアは1932年開始の最古参)の頂点、金獅子賞の行方は9月12日に決まる。
💡 話せるタネ紙のマンガ→アニメ→実写と、かたちを変えるたびに読者が増えて、ついに世界最古の映画祭へ。強い物語は媒体を選ばない。しかもその中身は「描くのをやめない人」の話だ——審査されるのは、描き続けることの物語そのもの。
追悼・続報🇳🇱 アムステルダム(9/11開幕)
追悼は、ヨーロッパ最大級の回顧展になった
前号で見送った草間彌生さんの大規模回顧展(作家の生涯の仕事を振り返る展覧会)が、9月11日にアムステルダム市立(ステデリック)美術館で開幕する(〜2027年1月17日)。もともと準備されていた展覧会だが、8月14日の逝去を受けて、同館は70年を超える創作の生涯をたたえる追悼展として開催すると発表した。構成は出身地・松本での初期作品から、ニューヨークでの実験の時代、東京での近作まで。ヨーロッパで一度も公開されたことのない歴史的作品と、本展のために用意された新作も並ぶ。
💡 話せるタネ逝去の翌月に世界規模の回顧展が開けるのは、何年も前から作家と美術館が準備してきたからだ。大きな展覧会は3年5年がかりの仕事——「いま見ている展示」は、ずっと前の誰かの計画でできている。なお、歩いて行ける新宿の草間彌生美術館(完全予約制)は変わらず開いている。
公募展🇯🇵 東京・六本木(9/2〜9/14)
無名の一枚が、国立の美術館の壁にかかる2週間
国立新美術館で「第110回記念 二科美術展覧会」(二科展)があす9月2日に始まる(〜9月14日、9/8休)。二科展は絵画・彫刻・デザイン・写真の4部門を持つ、日本で最も歴史ある公募展(誰でも作品を応募でき、審査を通れば展示される展覧会)のひとつ。110回目の会場には、プロも無名の新人も、審査という同じ関門をくぐった作品だけが並ぶ。高校生1,200円、中学生以下は無料。
💡 話せるタネ「展覧会は見に行くもの」と思っているうちは半分しか知らない。公募展は“出すもの”でもある——出品規約は誰でも読めるように公開されている。今年は見る側で回って、壁のどこに自分の絵を掛けたいか想像してみよう。
ファッション🇯🇵 群馬・高崎/前橋(9/19開幕)
顔を見せないデザイナーが、群馬にやってくる
ファッション界の伝説マルタン・マルジェラの個展が、9月19日から高崎のrin art associationを主会場に、アーツ前橋など計4会場で開かれる(多くは〜12/20、入場無料)。ベルギー出身のマルジェラは自らのメゾン(デザイナーが率いるファッションブランドの“家”)を立ち上げて服の常識を壊し続け、2009年にファッションの世界から退いたあとは現代美術家として活動する。今年春に東京・九段ハウスで開かれた日本初の大規模個展を再構成した内容で、前号までに紹介した「前橋国際芸術祭2026」の公式プログラムでもある。
💡 話せるタネマルジェラはキャリアを通じて公の場に顔を出さず、インタビューもFAXで答えてきた徹底した匿名主義者。「作品がすべてを語るべきだ」——顔と名前を出すのが当たり前のSNS時代に、真逆の戦い方で伝説であり続けている。
建築と賞🇯🇵 授賞式は東京(10/21)
美術館を“開かれた場所”に変えた建築家たちが、国の賞に
2026年度(第53回)の国際交流基金賞が発表された。受賞は、直島を現代アートの島に育てた福武總一郎、建築ユニットのSANAA、ドイツで日本研究書を出版し続けるユディツィウム出版社の3者(86件の推薦から選出、授賞式は10月21日)。SANAAは妹島和世と西沢立衛のふたり組で、ガラス張り・円形の金沢21世紀美術館や、フランスのルーヴル・ランス別館を設計し、2010年には建築界で最も権威あるプリツカー賞(建築のノーベル賞と呼ばれる国際賞)を受けている。
💡 話せるタネ「文化の国際交流」の賞に建築家——建物は動かないのに、人と文化を世界中から動かす。直島の福武氏との同時受賞は偶然じゃない。評価されたのはどちらも“アートで人が集まる場所”を作った仕事だ。
原画展🇯🇵 京都(〜9/21・残り3週間)
30年分の「きらめき」を、生原稿で確かめる
『神風怪盗ジャンヌ』『満月をさがして』の種村有菜の画業30周年を記念する「種村有菜 30周年記念展 きらめく少女たちの夢物語」が、京都駅近くのSpace Galleria KYOTO(京都アバンティ6F)で9月21日まで開かれている。東京・大阪を巡ってきた巡回展の最終地だ。1996年に少女マンガ誌『りぼん』でデビュー、『ジャンヌ』は累計600万部を超えTVアニメにもなった。会場には30年分の原画(印刷のもとになる、作家が直接描いた一枚)が並び、最終日にはトークショーとサイン会も予定されている。
💡 話せるタネ印刷されたマンガは均質な黒に見えるが、原画にはホワイトでの修正、貼り込み、鉛筆の下書きの跡が残っている。プロの「完成」は一発描きじゃない——直した跡こそ、上手くなる過程の地図だ。原画展では“絵”より“跡”を見よう。