美術館の展覧会に、いま連載を持つ漫画家が新作を足した。24日に国立西洋美術館で開幕するターナー展のために、坂本眞一が47ページの漫画を描き下ろしている。同じ24日、奈良で正倉院展が、秋田で『頭文字D』の原画展が開く。22日には芦屋で広重と北斎が141点そろう。街そのものが会場の写真祭は26日で閉じ、山口では136日間の即興展がもう動きだした。
西洋絵画🇯🇵 東京・上野(10/24開幕)
19世紀の画家の回顧展のために、いま連載中の漫画家が新作を描いた
「テート美術館 ターナー展――崇高の絵画、現代美術との対話」が、10月24日(土)に国立西洋美術館で開幕する。出品は80点以上。ロンドンのテート美術館が持つ油彩と水彩を、テーマごとに並べ直し、現代美術と向かい合わせる構成だ。ターナーは「光の画家」とも呼ばれる。英国ロマン主義を代表する画家で、移ろう光や大気のありようを、ときに克明に、ときに抽象化して描いた。この展覧会のために、『#DRCL midnight children』を連載中の漫画家・坂本眞一が、47ページの新作漫画『イカロスの筆』を描き下ろした。会場の特設ショップと、3,500円の特別セット券で手に入る。高校生は前売900円・当日1,100円だが、11月4日(水)から19日(木)は高校生・大学生の無料観覧期間で、学生証があればチケットはいらない。会期は2027年2月21日(日)まで、休館は月曜日と11月24日(火)、12月28日(月)から2027年1月1日(金・祝)、2027年1月12日(火)。
💡 美術館は、見にいく場所だと思っていた。描く側として呼ばれる入口も、そこにある。
古代の宝物🇯🇵 奈良(10/24開幕)
60件のうち11件は、人前に出るのが今回はじめてだ
第78回正倉院展が、10月24日(土)から11月9日(月)まで奈良国立博物館で開かれる。17日間。会期中は無休だ。並ぶ宝物は60件で、そのうち11件はこれまで出陳されたことがない。開館は朝8時から18時までで、金・土・日曜と祝日は20時まで延びる。入るには日時指定券が必要で、一般2,000円、高大生1,500円、小中生500円。月~木は午後4時以降、金・土・日曜と祝日は午後5時以降の枠なら「レイト割」が利いて、高大生1,000円、小中生は無料になる。空きがあれば当日分を敷地内の特設窓口でも売るが、1枚につき200円の発券手数料がかかる。
💡 78回続いていて、1回あたり17日しか開かない。短く区切ることが、長く続ける方法になっている。
マンガ🇯🇵 秋田・横手(10/24開幕)
ひとつの題材を30年描き続けた原画が、秋田に集まる
「しげの秀一原画展 ~峠から未来へ~」が、10月24日(土)に横手市増田まんが美術館で始まる。並ぶのは3作品。『頭文字D』『MFゴースト』『昴と彗星』の原画とカラーイラストが出る。「公道での最速を目指す者たちの物語」という一本の軸が、3作品をまたいで約30年つながっている。デビューは1981年。同じ主題を描き替えながら、ここまで来た。会期は12月27日(日)まで、休館は11月17日(火)と12月15日(火)。企画展の観覧料は高校生1,000円・中学生700円で、当日券だけを会場で売る。
💡 30年、同じ題材を掘っている。次々に変えるより、ひとつを深く掘るほうが遠くまで行くこともある。
浮世絵🇯🇵 兵庫・芦屋(10/22開幕)
北斎と並べると、広重の絵に雨の場面が多いと分かる
10月22日(木)、芦屋市立美術博物館で「浮世絵の風景画を楽しむ 広重+北斎」が開幕する。並ぶのは141点。歌川広重と葛飾北斎の浮世絵を、「天候と季節」「時間帯」「人物描写」「構図と仕掛け」といった項目ごとに並べて見比べる構成だ。『東海道五十三次之内』『名所江戸百景』『富嶽三十六景』などの人気シリーズから選ばれている。解説には「広重の絵には雨のシーンが多い」といった視点が項目ごとに添えられる。中学生以下は無料、大高生1,000円で、着物で行くと2割引きになる。会期は2027年1月17日(日)まで、休館は月曜日(11月23日と2027年1月11日は開館し、11月24日(火)と2027年1月12日(火)が休み)と年末年始。
💡 うまい絵を1枚見るより、2枚を並べたほうが学べることがある。自分の絵も、誰かの隣に置くと見え方が変わる。
写真🇯🇵 東京・八重洲(10/26終了)
今年のハッセルブラッド賞を受けた写真家の展示が、無料のまま今週で閉じる
T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2026が、10月26日(月)で終わる。入場は無料だ。10月3日(土)からの24日間、八重洲・日本橋・京橋・銀座エリアの屋内と屋外を会場にしてきた。今年のテーマは「と(&)」。メイン展示のひとつは、南アフリカ出身の写真家ザネレ・ムホリの《When Things Become a Crown,》で、ムホリは2026年のハッセルブラッド賞を受けている。もうひとつのメインはルーカス・フォグリアの《Constant Bloom》で、学生を対象にしたプログラムの展示もある。
💡 チケット代がかからない展示は、二度行ける。一度目でよく分からなかったものに、もう一度会いにいける。
音とメディア🇯🇵 山口(10/17開幕)
形を決めないまま始まった展覧会が、136日間ひらく
音楽家・大友良英と山口情報芸術センター[YCAM]の新作展「即興!」が、10月17日(土)に始まった。2027年3月1日(月)までの136日間。公開される4作品のうち、《Duo》は坂本龍一へのトリビュート、《Dance》は現代美術家・持田敦子らとの共作、《Filaments Outside》は野外のサウンド・インスタレーションで、会場はスタジオから中庭、山口市中央公園まで広がる。会期中の毎週土曜15時30分にはライブパフォーマンスが入る(10月24日(土)だけは翌25日(日)に振り替わる)。18歳以下は無料だ。29歳以下は500円。開館は10時から19時で、休館は火曜日(祝日なら翌日)と年末年始。
💡 同じ展示でも、行った日によって聞こえるものが変わる。決めきらずに始めるやり方が、ここでは作品そのものになっている。
国際展🇰🇷 釜山(11/1閉幕)
22カ国46人の声を、ひとつの合唱として扱う展覧会がある
2026釜山ビエンナーレが、11月1日(日)で閉幕する。会期は65日間。8月29日から、《不協和の合唱(Dissident Chorus)》をテーマに、釜山現代美術館・スペースOneZ・旧釜山南高等学校の3会場で開かれてきた。観覧できるのは火曜から日曜の10時から18時までで、月曜は休み。22カ国から46人が参加し、インスタレーション、サウンド、パフォーマンス、映像、彫刻が並ぶ。音と身体による言葉以外のやりとりを軸に、釜山に残る音響資料を使って労働・移動・抵抗の記憶をたどる内容だ。共同芸術監督のエヴリン・シモンズとアマル・カラフは、約70チームが応募した国際公募で選ばれた。
💡 展覧会をつくる側も、公募で決まることがある。見にいく道と、企画して中に入る道は別にある。
今週はここまで。
今週ひらくものは、単体で立っていない。ターナーの油彩の隣には現代美術が置かれ、広重の風景の隣には北斎が置かれる。しげの秀一の原画は3作品ぶんがまとめて並び、正倉院の11件は、すでに知られた49件の横に出る。釜山では46人ぶんの声が、ひとつの合唱として扱われている。山口の即興は、隣で何が鳴っているかによって毎回変わる。作品の意味は、それ自体よりも、何の隣に置かれたかで決まる場面が多い。自分の絵を人に見せるときにも、同じことが起きている。次号もお楽しみに。
編集:東洋美術学校 | study.to-bi.ac.jp ・ 全記事 出典リンク付きの要約です