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TOBI STUDY | 東美スタディ ・ 今週のアートシーン

#22150年前、絵の先生はイタリアから来た

2026年10月9日号 ・ 出す側の判断が見える6本 ・ 3分で読める
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きょう名古屋で、亡くなったイラストレーターの原画が並びはじめた。会期は10日間しかない。あすは福岡で、ホラー小説の書き手たちがつくった展示が開く。14日には大徳寺の宝が41年ぶりに上野へ出て、15日にはグッドデザイン賞の大賞が明かされる。審査は9月に終わっていて、誰も言わずに持っているだけだ。17日、丸の内に来るのは150年前に日本へ呼ばれたイタリア人の絵。出す側が何を選んだのかが見える6本を、3分で。

イラスト🇯🇵 愛知・名古屋(きょう10/9開幕)

10日間だけ、120点の原画が名古屋に並ぶ

アルべホール名古屋で、きょう10月9日(金)から「いのまたむつみ回顧展」が始まった。18日(日)までの10日間だけの開催だ。2025年12月に横浜で開かれた、没後初となる大規模原画展の巡回にあたる。並ぶのは120点を超えるアナログ原画と漫画原稿だ。『宇宙皇子』『風の大陸』『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』シリーズ、『テイルズ オブ』シリーズ、『小説ドラゴンクエスト』。仕事の幅がそのまま出る。今回はじめて公開される未発表作品の原画も含まれる。開場は11時から18時で、最終入場は閉場の30分前まで。入場料は税込1,500円、未就学児は無料(保護者の同伴が必要)で、入場特典が付く。

💡 話せるタネ画面で見た絵と、紙の上の現物は別物だ。筆の跡。塗り重ねた厚み。直した跡。印刷に乗るときに落ちる情報が、原画にはまだ残っている。だから10日なのだと思う。
この記事の用語:イラストレーション(本やゲーム、広告など、何かを伝える目的のために描かれる絵。作品単体で完結する絵画とは、仕事の成り立ちが違う)
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体験型展示🇯🇵 福岡(10/10開幕・前売はきょうまで)

展示をつくったのは、ホラー小説の書き手たちだ

福岡市博物館で10月10日(土)から「1999展 ―存在しないあの日の記憶―」が始まる(〜2027年1月11日(月・祝))。空間・映像・音響を駆使したホラー体験型の展覧会で、「世界の終わり」をテーマに1999年前夜を舞台とし、案内役は「終末の少女」だ。つくったのはホラークリエイターユニット「バミューダ3」(背筋、佐藤直子、西山将貴)。空間コンセプトアートをMakoto Arai、終末の少女のイラストを米山舞が手がけている。開場は9時30分から17時30分で、最終入場は閉館の30分前まで。休館は月曜日(月曜が祝休日の場合はその翌平日)と、12月28日(月)〜1月4日(月)。数量限定の前売は一般1,999円、中高大1,666円、小学生999円で、販売はきょう10月9日(金)23時59分まで。当日券は一般2,500円、中高大2,000円、小学生1,000円になる。1999年生まれの人は当日券の一般が1,999円で、会場の券売窓口のみ、生年月日の確認できる身分証明書の提示が必要だ。

💡 話せるタネ怖さは、見せた分だけ強くなるわけではない。暗がり。足音。途切れる映像。観客が自分で埋めた余白がいちばん怖い。描かずに置くという判断が、そこで効いてくる。
この記事の用語:空間演出(照明・音・動線・仕掛けを組み合わせて、その場にいる人の体験そのものを設計すること。壁に展示物を並べるのとは別の設計が要る)
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日本美術🇯🇵 東京・上野(10/14開幕)

寺の外に出ないものが、41年ぶりに上野へ来る

東京国立博物館 平成館で10月14日(水)から開創700年記念 特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑」が始まる(〜12月6日(日))。京都の禅寺・大徳寺の宝物が一堂に会するのは41年ぶりで、東京では初めてだ。出品は国宝14件、重要文化財69件。前期(10月14日〜11月8日)には国宝「観音猿鶴図」、後期(11月10日〜12月6日)には重要文化財「龍虎図」が出る。三門に安置されてきた「釈迦如来坐像」と「千利休立像」は初公開で、国宝「大井戸茶碗 喜左衛門井戸」とともに会期を通して並ぶ。開館は9時30分から17時で、毎週金・土曜と11月1日・2日・22日は20時まで。入館は閉館の30分前まで。休館は月曜日(11月2日・23日・30日は開館)と11月24日(火)。観覧料は一般2,300円、大学生1,300円、高校生900円で、前売はそれぞれ200円引きになる。

💡 話せるタネ茶碗が国宝になる理由は、技術の高さだけでは説明がつかない。誰が持ったか。誰が使ったか。何と呼ばれてきたか。その積み重なりごと作品として見る目線は、美術館の外でも使える。家にある古い道具にも効く。
この記事の用語:茶の湯(抹茶をたてて客をもてなす文化。茶碗や掛物の取り合わせ、部屋の設えまでを含めて組み立てる点で、総合的なデザインの実践でもある)
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デザイン🇯🇵 日本全体(10/15発表)

大賞はもう決まっている。15日まで誰も言わないだけだ

2026年度グッドデザイン賞の受賞発表が10月15日(木)にある。この日に出るのはグッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100、グッドデザイン特別賞だ。ただし主催者の報告によれば、特別賞を決める審査会は9月17日に終わっている。ベスト100の受賞者がプレゼンテーションを行い、審査委員長・副委員長と各ユニットリーダーの議論で選ばれた。全20カテゴリーから1件ずつ選ばれた計20件が金賞になり、その20件のなかから大賞が決まる仕組みだ。制度が始まったのは1957年で、いまは年間およそ5,000件、世界45の国と地域から応募がある。審査の視点は4つある。人間的、産業的、社会的、時間的。「単にものの美しさではなく、人、社会そして未来を豊かにするもの」を「グッド」としている。受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2026」は10月31日(土)から11月4日(水)まで。

💡 話せるタネこの賞が見ている視点は4つ。見た目はそのうちのひとつでしかない。長く使えるか。つくる人が無理をしていないか。社会で何が変わるか。かっこよさの話を一度止めて点検すると、直す場所が見つかる。
この記事の用語:Gマーク(グッドデザイン賞の通称であり、受賞したデザインに与えられる印。1957年に始まった制度で、60年以上この呼び名で親しまれてきた)
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近代美術🇯🇵 東京・丸の内(10/17開幕)

58歳で日本に呼ばれた画家が、浅井忠を教えた

三菱一号館美術館で10月17日(土)から「フォンタネージ――イタリアの光・心の風景」が始まる(〜2027年1月24日(日)、会期中展示替えあり)。アントニオ・フォンタネージは1876年、58歳で工部美術学校の画学教師として日本に招かれた。門下から浅井忠や小山正太郎らが出ている。約200点が並ぶ日本初の大回顧展だ。開館は10時から18時で、祝日を除く金曜日、第2水曜日、会期最終週の平日は20時まで。入館は閉館の30分前まで。休館は月曜日(祝日と、トークフリーデーの10月26日・11月30日・12月28日、1月18日は開館)、12月31日と1月1日。観覧料は一般2,300円、大学生1,300円、高校生1,000円。オンラインでのみ一般2,100円、大学生1,000円で買え、毎月第2水曜日は「マジックアワーチケット」1,600円がある。

💡 話せるタネ日本の油絵は、独学で始まったわけではない。国が先生を呼んだ。学校を建てた。描き方ごと輸入した時期がある。いま当たり前に使っている画材や描き順にも、150年前に誰かが持ち込んだ形が残っている。
この記事の用語:お雇い外国人(明治政府が技術や学問を移すために高額で招いた外国人の専門家。鉄道や医学だけでなく、美術の教育にも招かれた)
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映画🇯🇵 東京・日比谷(10/17チケット発売)

学生は700円。映画祭がいちばん下げたのはそこだ

第39回東京国際映画祭が10月26日(月)から11月4日(水)までの10日間、日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアで開かれる。今年は料金を改定し、学生料金を一部作品を除き1,100円(当日料金700円)と例年より下げた。理由として主催者は、若い世代がより気軽に映画館で映画に触れ、映画祭に繋がれるようにすることを挙げている。チケットの一般発売は10月17日(土)からで、部門ごとに時間をずらした先着販売だ。アニメーション、ユース、日本映画クラシックスなどは10時に始まる。アジアの未来やワールドフォーカスは12時、ガラ・セレクションは14時。コンペティションは16時だ。先行抽選の対象作品は17日の販売には出ない。有楽町駅前のチケットセンターは10月26日(月)から11月4日(水)まで開く。期間中は特集上映「TIFF/NFAJ クラシックス 没後70年 映画監督 溝口健二」もある。10月27日(火)から11月1日(日)まで。国立映画アーカイブとの共催で、こちらは別料金だ。

💡 話せるタネ映画祭は、公開されるかどうかも分からない映画を先に見られる場所だ。評価はまだ定まっていない。誰かの感想もない。その状態で自分が選ぶ。700円で買えるのは席ではなく、その順番のほうだと思う。
この記事の用語:フィルムアーカイブ(映画のフィルムや資料を集めて保存し、上映できる状態で未来へ渡す機関。国立映画アーカイブは日本で唯一の国立映画専門機関にあたる)
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今週はここまで。
今週の6本は、どれも誰かが「出す」と決めた話だ。いのまたむつみの原画は、描いた本人がいなくなってから名古屋へ出た。大徳寺の宝は寺の外に出ないものばかりで、それが41年ぶりに動く。グッドデザイン賞は9月に決まった答えを、15日まで伏せたまま持っている。フォンタネージは150年前、呼ばれて日本へ来た側だった。1999展は、誰も体験していない1999年の記憶をつくって見せる。東京国際映画祭が学生料金を下げたのも、誰に見てほしいかを選び直した判断だ。つくることと、人前に出すこと。そのあいだには、いつも誰かの決断がはさまっている。次号もお楽しみに。
編集:東洋美術学校 | study.to-bi.ac.jp ・ 全記事 出典リンク付きの要約です
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