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TOBI STUDY | 東美スタディ ・ 今週のアートシーン

#1518歳が選び、73歳が始めた

2026年9月15日号 ・ 年齢の常識がゆらぐ6本 ・ 3分で読める
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ヴェネチア国際映画祭が閉幕し、日本映画に2つの賞が届いた。塚本晋也監督作を選んだのは、イタリア全土から集まった18歳の高校生20人の審査員。『ルックバック』も独立賞で日本初の最優秀作品賞に輝いた。いっぽう滋賀では、73歳から絵を始めた丸木スマの大規模な展覧会が始まっている。湯島には親子三人で描いた暁斎の衝立、丸の内には没後60年の河井寬次郎。始めるのに遅すぎることも、選ぶのに若すぎることもない——6本を3分で。

映画・続報🇮🇹 ヴェネチア(9/12授賞式)

高校生20人が、"自分たちの金獅子"を日本映画に渡した

#13で出発を見送った2作の結果が出た。塚本晋也監督『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が「レオンチーノ・ドーロ賞(金の小獅子賞)」を受賞——イタリア全20州から選ばれた18歳の高校生20人が審査員を務める1989年創設の賞で、日本映画の受賞は史上初だ。是枝裕和監督『ルックバック』も独立賞(コンペ本体とは別に、外部団体が独自の審査で贈る賞。コラテラル・アワードとも)のひとつ「Cinema & Arts Award」で日本初の最優秀作品賞を受けた。コンペの頂点・金獅子賞はデンマークのメイ・エル・トーキー監督『Woman Unknown』へ。

💡 話せるタネ映画祭の賞は、審査員の数だけ「別の答え」がある。ベトナム帰還兵の証言を追った塚本作品を、きみと同世代のイタリアの18歳たちが選んだ——「若い人に見てほしい」と言い続けた監督への、いちばんまっすぐな返事だ。
日本画🇯🇵 滋賀・大津(〜11/23)

73歳で筆をとった人の絵が、県立美術館を埋めている

滋賀県立美術館で「丸木スマ展 73歳からのアーティスト」が開かれている(9月11日〜11月23日)。丸木スマ(1875–1956)は広島生まれ。絵の教育は受けておらず、1948年、73歳のときに家族——息子は「原爆の図」で知られる画家・丸木位里——のすすめで描き始めた。庭の花、猫、鶏、海の生きもの。身のまわりの世界を描いた絵は、1950年から女流画家協会展や再興院展(日本美術院が主催する、明治から続く日本画の公募展覧会)に入選を重ねた。本展は初期から晩年まで約130点、その画業の全体を見せる大規模なものだ。

💡 話せるタネ73歳の「初心者」の絵が、なぜプロの公募展を通ったのか。技術の巧拙より先に、その人にしか見えていない世界があるかどうか——絵の価値の順番を、スマの絵は静かにひっくり返してくる。
絵師🇯🇵 東京・湯島(9/19開幕)

「画鬼」の家族が一枚に——親子三人の合作、神社で公開

幕末から明治を駆けた絵師・河鍋暁斎の展覧会「暁斎が住まう湯島」が、今週土曜9月19日から湯島天満宮の宝物殿で開かれる(〜12月13日)。目玉は親子三人の合作衝立(ついたて。部屋を仕切る一枚立ての家具で、両面が絵の見せ場になる)《龍虎鷹山水図》。表の龍虎を暁斎が、裏の鷹を息子の暁雲が、山水を娘の暁翠が描いた、高さ145cmの文京区指定有形文化財だ。暁斎は湯島に住み、この地の神社仏閣に多くの絵を残した——美術館ではなく、絵が奉納された土地そのもので見る展覧会になる。

💡 話せるタネ暁斎の工房は家族がチームだった。娘の暁翠も父に学んで職業画家になり、家の画業を継いだ。「絵がうまい家系」ではなく「絵で食う技術を家庭内で継承した」——江戸の絵師のリアルな仕事場が、一枚の衝立に写っている。
工芸🇯🇵 東京・丸の内(〜11/8)

「日用品こそ美しい」——100年前の衝撃を、51件全部見せる

丸の内の静嘉堂文庫美術館で「民藝SHOCK!!—没後60年 静嘉堂の河井寬次郎」が開催中だ(〜11月8日)。河井寬次郎は大正から昭和の陶芸家で、民藝運動(柳宗悦らが1920年代に始めた運動。名もない職人の日用品にこそ美が宿るとする考え方)の中心人物のひとり。静嘉堂が所蔵する寬次郎作品51件が初めて全公開され、日本・中国・朝鮮の古陶磁の名品と並ぶ。轆轤(ろくろ)の器から、彫刻のような晩年の造形まで——「使うための美」を追った人の全身が見える。

💡 話せるタネ民藝の問い=「美術品と日用品、どちらが上か?」は100年経っても現役だ。量産と手仕事、道具と作品——デザインを学ぶなら一度は通る問いの原点が、ここにある。
開催決定🇯🇵 福岡(10/30〜2027/1/11)

チームラボが、7年ぶりに城跡へ帰ってくる

チームラボの夜の野外展「チームラボ 福岡城跡 光ノ祭 2026-2027」の開催が発表された。10月30日から2027年1月11日まで、福岡・舞鶴公園の福岡城跡で、7年ぶり3回目の開催だ。九州最大級の総石垣の城跡が、人の動きに反応して光と音を変えるインタラクティブ(鑑賞者の動きや存在が作品の側に影響を与える仕組み)な空間になる。風や雨など環境で姿を変える新作《生生流転柱》も出品。チケットは10月1日から販売される。

💡 話せるタネ文化財の石垣は、触れないし壊せない。だから「光を当てて反応させる」——実物に手を加えずに体験だけを重ねるデジタルアートは、文化財活用と実は最高に相性がいい。
マンガ・アニメ🇯🇵 京都(今週末 9/19–20)

西日本最大のマンガ・アニメの祭典が、15回目の週末

今週末9月19日・20日、「京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)2026」がみやこめっせ・ロームシアター京都・京都国際マンガミュージアムの3会場で開かれる。西日本最大級のマンガ・アニメ・ゲームの見本市(企業が新作や商品を披露し、業界と客が出会うイベント。ビジネスの場でもある)で、今年は63の企業・団体が出展、ステージは過去最多の37本。15回記念として、クリエイターやプロデューサーを招く「クリエイティブステージ」が新設される。

💡 話せるタネファンとして楽しむなら新作ステージ、作り手志望なら新設のクリエイティブステージへ。「好きな作品を見る目」と「仕事の現場を見る目」を切り替えて歩くと、同じ会場がまったく違って見える。
今週はここまで。
今週土曜9月19日は開幕ラッシュだ——湯島の暁斎、京都の京まふ、そして#13で紹介した高崎・前橋のマルジェラ個展と、東京駅の『水滸伝』展も同じ日に開く。18歳の審査員と73歳の新人画家が教えてくれるのは、たぶん同じこと——資格や年齢より先に、見る目と手が動くかどうか。土曜の丸を、どこにつける? 次号もお楽しみに。
編集:東洋美術学校 | study.to-bi.ac.jp ・ 全記事 出典リンク付きの要約です
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