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TOBI STUDY | 東美スタディ ・ 今週のアートシーン

#21鳴らす楽器から、自分でつくる

2026年10月6日号 ・ 道具から始まるアート6本 ・ 3分で読める
用語=用語集で意味を調べる 固有名=外部の出典へ

北斎の娘、葛飾応為が描いたとされる肉筆画は、世界に10数点しか確認されていない。その代表作が、きょう東京・神宮前で3年ぶりに出た。8日は富山でデザイナーが来館者の前で絵を描き、9日は金沢で100年分のデザイン史、六本木では34校の学生アニメが無料で上映される。10日は大阪で、50年続くテレビの美術番組が展覧会になる。13日、ロンドンの巨大なホールに新作を置くのは、楽器から自分でつくる音の作家だ。何を使って表すか。その選び方が見える6本を、3分で。

日本美術🇯🇵 東京・神宮前(きょう10/6開幕)

北斎の娘が描いた夜景が、3年ぶりに展示室へ出る

太田記念美術館で、きょう10月6日(火)から「葛飾応為『吉原格子先之図』 夜景の系譜」が始まった(〜12月6日(日))。葛飾応為は北斎の娘で、自らも絵師として活躍した女性だ。代表作の「吉原格子先之図」は、光と影の鮮やかな対比で遊里の夜を浮かび上がらせた一枚で、公開は3年ぶり。応為が描いたとされる肉筆画は、世界で10数点しか確認されていない。この絵は会期を通して展示されるが、ほかは11月3日(火・祝)までの前期と11月7日(土)からの後期で全点が入れ替わる。鈴木春信、歌川広重、小林清親らの夜景の名品に加えて、明治末以降に海外向けにつくられ、これまでほとんど注目されてこなかった夜景作品も並ぶ。入場料は一般1200円、大高生800円、中学生(15歳)以下は無料。支払いは現金だけだ。10月13日、19日、26日、11月2日、4〜6日、9日、16日、24日、30日は休館になる。

💡 話せるタネ夜の絵は、画面を暗く塗るだけでは夜にならない。どこかに明かりをひとつ置くと、そのまわりの暗さが急に深く見えてくる。目立たせたいものがあるとき、それ自体を描き込むより、周りを引いてみる手もある。
この記事の用語:肉筆画(版画ではなく、絵師が筆で直接描いた一点ものの絵。刷って数を出す浮世絵版画と区別して呼ぶ)
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テキスタイル🇯🇵 富山(10/10開幕)

ミナ ペルホネンの布は、手作業の図案から始まる

富山県美術館で10月10日(土)から企画展「つぐ minä perhonen」が始まる(〜12月22日(火))。2025年に創設30周年を迎えたファッション・テキスタイルブランド、ミナ ペルホネンの活動を「つぐ」という言葉でひもとく展覧会だ。ものづくりはデザイナーの手作業から生まれる図案に始まり、職人との対話と試行錯誤を重ねて布になり、服やインテリアへ形を変えてきた。会場には原画やテキスタイルのほか、刺繍・織・プリント工場の様子も並ぶ。開幕前の10月8日(木)には、創業者でデザイナーの皆川明によるライブペインティングが2階ホワイエで公開され(9時30分〜16時の予定、無料・立ち見)、描き上がった作品は会期中、展示の入口に飾られる。観覧料は一般1,500円、大学生750円で、高校生以下は無料。休館は毎週水曜と、10月13日(火)、11月24日(火)。

💡 話せるタネ服の柄は、最初から布の上にあったわけではない。紙に描いた1枚が、刷る人や織る人の手を通って、何メートルもの布になる。自分の絵がどんな素材に載ったら化けるのか。そこまで想像して描くと、線の引き方が変わってくる。
この記事の用語:図案(布や器などの模様のもとになる下絵。職人や工場が形にすることを前提に描かれる)
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デザイン史🇯🇵 石川・金沢(10/9開幕)

機械が来たとき、職人の仕事はどう変わったのか

金沢の国立工芸館で10月9日(金)から「デザイン・クロニクル展 なにが生まれて、なにが変わった?」が始まる(〜2027年1月11日(月・祝))。出発点は19世紀の急速な工業化だ。新しい素材と機械による大量生産が広がり、それまで職人が手仕事でつくってきた物を新しいやり方でつくるには、根本からの転換が必要になった。展示は館のデザインコレクションを中心に、19世紀後半のアーツ&クラフツ運動から、アール・ヌーヴォーとアール・デコ、バウハウスに代表されるモダニズム・デザイン、第二次大戦後までの100年あまりをたどる。クリストファー・ドレッサー、アルフォンス・ミュシャ、マリアンネ・ブラント、ミース・ファン・デル・ローエ、チャールズ&レイ・イームズ、エンツォ・マーリらの仕事が、椅子やティーセットのかたちで並ぶ。金沢へ移転してから、立体と平面のデザインをまとめて紹介するのはこれが初めてだという。観覧料は一般1,200円、大学生800円で、文化の日の11月3日(火・祝)は無料。月曜休館(10月12日、11月23日、2027年1月11日の祝日は開館)で、かわりに10月13日(火)と11月24日(火)が休みになる。12月29日(火)から1月1日(金)も休館だ。

💡 話せるタネ「デザイン」という仕事は、昔からあったわけではない。手でひとつずつつくっていた物を、機械で何千個もつくるようになったとき、形を先に決める役が要るようになった。いま使っている椅子やマグカップにも、誰かが量産の前に引いた線が残っている。
この記事の用語:アーツ・アンド・クラフツ運動(19世紀後半のイギリスで起きた、機械による粗悪な量産品に対し、手仕事の質と暮らしの美しさを取り戻そうとした運動)
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アニメ🇯🇵 東京・六本木(10/9〜12)

34校の学生アニメ229本が、国立新美術館に集まる

インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル(ICAF)2026が、10月9日(金)から12日(月・祝)まで国立新美術館の3階講堂と研修室で開かれる。全国の大学や専門学校などの教育機関でつくられたアニメーションを一堂に集めて上映する、学生アニメーションのフェスティバルだ。今年は34校から229本が集まる。入場は無料だ。各校が1本ずつ推した「各校選抜プログラム」の34本は、会期に先立って特設サイトでフル尺のまま公開されていて、会場での上映時には観客賞の投票対象になる。

💡 話せるタネ同じ年ごろの人がつくったアニメを、まとめて何十本も見られる機会はそう多くない。うまいかどうかより、「自分ならここをこう動かす」が浮かぶ作品があるか。浮かんだ作品を並べていくと、自分の好みの地図ができあがる。
この記事の用語:短編アニメーション(数分から数十分ほどの長さのアニメーション。個人や少人数でも完成させやすく、映画祭や学生の発表の主な舞台になる)
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美術とテレビ🇯🇵 大阪・中之島(10/10開幕)

50年分の「見どころの一言」を、テレビ番組が展示にする

大阪中之島美術館で10月10日(土)から「NHK日曜美術館50年展」が始まる(〜12月20日(日))。NHK「日曜美術館」は1976年に放送を始め、回数は2,500回を超えた。今年3月には「週間ファインアートテレビ番組の最長放送」としてギネス世界記録に認定されている。東京、静岡を回ってきた展覧会で、番組を彩ってきた120点を超える作品を5つの章で紹介し、出演者が過去の放送で語った言葉も選んで上映する。第1章は、番組が1976年4月に「私と○○」という題で始まったころの、各界のゲストの言葉から入る。開館は10時〜17時(入場は16時30分まで)。休館は月曜で、祝日の10月12日と11月23日は開き、翌13日(火)・24日(火)に振り替わる。観覧料は当日で一般2,000円、高大生1,200円、小中生500円。前売は一般1,800円、高大生1,000円、小中生300円で、10月9日(金)まで買える。

💡 話せるタネ作品の前で「すごい」の先が出てこないことがある。そこに誰かが一言添えるだけで、同じ絵が違って見えはじめる。番組が50年かけてためてきたのは、その一言のほうだ。自分の言葉でひとつ足せるようになると、見ることはもっと面白くなる。
この記事の用語:美術評論(作品を言葉で読み解き、その意味や価値を論じること。書き手は評論家に限らず、作家や俳優が担うこともある)
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現代美術🇬🇧 ロンドン(10/13公開)

演奏に使う楽器から、作家が自分で発明する

テート・モダンの巨大な吹き抜け、タービン・ホールで10月13日(火)からタレク・アトゥイの新作が公開される(2027年4月11日(日)まで、入場無料)。アトゥイは1980年にベイルートで生まれ、パリを拠点にする音の作家で、作曲家でもある。毎年1人の作家がこの空間に新作をつくる「ヒュンダイ・コミッション」の11作目にあたり、この10年で1,900万人を超える人が訪れてきた。テートの発表によると、制作の中心にあるのは楽器の発明だ。ほかの作家や作曲家、つくり手と組んで精巧に組み上げた楽器は、そのまま彫刻としても立つ。ガラスや水、陶器を使うことが多く、手で触れたり、息を吹きかけたり、モーターで動かしたりして音を出す。

💡 話せるタネ楽器店に並ぶ楽器は、誰かが決めた音の出し方のひとつにすぎない。鳴らし方から考え直せば、コップの水にも音がある。絵も同じで、画材は決まっていると思い込まなければ、描く道具からつくってしまってもいい。
この記事の用語:サウンドアート(音を素材にした美術。演奏会とは別に、空間や物から鳴る音そのものを作品として体験させる)
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今週はここまで。
今週の6本を並べると、どれも道具の話に行き着く。応為は筆一本で、暗がりのなかに明かりを置いた。皆川明の図案は、職人の手と工場の機械を通って布になる。金沢の展示がたどるのは、その機械が職人の仕事を変えていった100年だ。六本木には学生が自分で動かしたアニメが229本集まり、大阪ではテレビ番組が、絵を見るための言葉を50年分ためてきた。そしてロンドンのアトゥイは、音を出す楽器そのものから自分でつくる。何を使って表すかを選んだ時点で、作品はもう始まっている。次号もお楽しみに。
編集:東洋美術学校 | study.to-bi.ac.jp ・ 全記事 出典リンク付きの要約です
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