芸術祭🇯🇵 東京(10/10開幕)
会場は美術館ではない。東京の街そのものだ
東京都と東京国際文化芸術祭実行委員会が、10月10日(土)から12月31日(木)までの83日間、「ARTE TOKYO(東京国際文化芸術祭)」を初めて開く。会場は美術館ではなく街で、臨海、日比谷・丸の内、代々木・渋谷の3エリアが軸になる。参加するのは大巻伸嗣、鈴木康広、玉山拓郎、目[mé]、永山祐子、藤本壮介、Rhizomatiks ら、現代美術・建築・メディアアートをまたぐ顔ぶれだ。都市型のパフォーマンス企画「ARTE TOKYO CIRCUS」は、現代サーカスの田中未知子をディレクターに迎え、3エリアの作品と呼応する上演を組む。開園80周年の浜離宮恩賜庭園では、ふだん閉じている夜間の庭園を使うプロジェクトが11月中旬から12月下旬のうち30日間程度(時間は午後6時〜9時半の範囲で調整中)。六本木アートナイト、アートウィーク東京、東京国際映画祭を含む75件がパートナープログラムとして名を連ねる。
💡 話せるタネ美術館は作品を守る箱だ。街は守ってくれない。風が吹き、雨が降り、人がその前を通り過ぎていく。だから屋外に置く作品は、置かれる前から場所の形に引っぱられる。どこに置くかを決める作業は、もうつくる作業の一部に入っている。
アニメ🇯🇵 京都・岡崎(10/3開幕)
説明するほど遠ざかる言葉に、アニメの画面から近づく
京都市京セラ美術館で10月3日(土)から『禅とジブリ』京都展が始まる(〜12月6日(日)、新館 東山キューブ)。もとになったのは、スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫と禅僧の対談をまとめた同名の本だ。展示の中心に置かれるのは、第96回米アカデミー賞の長編アニメーション映画部門賞を受けた『君たちはどう生きるか』(2023年)。ジブリ作品を通して“禅的なまなざし”に触れる、これまでにない体感型の展覧会だという。企画・制作はスタジオジブリと日本テレビ、主催に読売テレビ、読売新聞社、ぴあ、京都市が並ぶ。開館は10時〜18時(入場は閉館30分前まで)、月曜休館(祝日は開館)。観覧料は当日で一般・大学生1,900円、中高校生1,500円、小学生1,100円。前売はそれぞれ1,700円、1,300円、900円。
💡 話せるタネ「わかる」と「感じる」は別の経路だ。禅問答がかみ合わないのは、言葉で詰めようとするから。アニメの一場面なら、理屈をこえて先に届くことがある。伝えたいことが言葉にならないとき、絵や音に預けるという手が残っている。
現代美術🇯🇵 鹿児島・湧水町(10/3開幕)
テレビの定時放送は終わった。作者は鹿児島で個展を開く
鹿児島県の霧島アートの森で10月3日(土)から、アートラボ・プロジェクト 井上涼展「ふたりのマチルダ」が開かれる(〜11月29日(日))。井上涼は、世界の美術を歌とアニメーションに仕立てるNHK「びじゅチューン!」をつくってきた作家だ。その番組は2025年度で定時放送を終えている(動画はNHKラーニングで見られる)。会場の霧島アートの森は、草間彌生、アントニー・ゴームリー、ダニ・カラバン、チェ・ジョンファ、若林奮らの作品が敷地に点在する野外美術館で、屋内の展示室が今回の舞台になる。10月4日(日)には本人のギャラリートークが午前11時と午後2時の2回あり、当日付の観覧券(500円、幼児無料)を持っていれば誰でも参加できる。敷地の野外作品や秋のコレクション展も見るなら、別に入園料(一般400円、高・大学生280円)がいる。開園は9時〜17時(入園は16時30分まで)、月曜休園(休日にあたる場合は翌日)。
💡 話せるタネ番組が終わることと、作者が止まることは別の話だ。発表する場所は、テレビから美術館へ、美術館から画面へと動いていく。ひとつの枠がなくなったとき、次にどこへ持っていくかを決められる人が、長く続けられる。
ゲーム🇯🇵 東京・渋谷(きょう10/2開幕)
遊ばれていた絵が、30年たってケースに入る
渋谷モディの東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYA で、きょう10月2日(金)から「アンジェリーク 30th メモリアルミュージアム 今も女王候補であるあなたへ」が始まった(〜11月8日(日))。シリーズの30周年を記念して、初代から最新作『アンジェリーク ルミナライズ』までをたどる年表、ヒロインと守護聖の新規イラストを使った等身大パネル32体、原画やメモ書きを含む初公開の制作資料の複製、世界観を再現したフォトスポットが並ぶ。開催は11時〜19時(展示の最終入場は18時半)。入場料は前売1,800円、当日2,000円。主催は大日本印刷とBS日テレで、特別協力にコーエーテクモゲームスが入る。
💡 話せるタネ遊ばれているあいだ、ゲームの絵は「資料」と呼ばれない。画面の中で動いて、消えていくものだ。それが30年たつと、同じ絵がケースに入って照明を当てられる。いま自分が描いている絵も、残しておけば何十年後かに同じ扱いを受けるかもしれない。
ファッション🇬🇧 ロンドン(10/8開幕)
1990年代の服と美術を、はじめてまとめて並べる
テート・ブリテンで10月8日(木)から「The 90s: Art and Fashion」が開かれる(〜2027年2月14日(日))。1990年代の美術・写真・ファッションをまとめて扱う展覧会は、これが初めてだという。約70人の作家・写真家・デザイナーが集まり、YBAs(ヤング・ブリティッシュ・アーティスツ)からアレキサンダー・マックイーンまで、写真・絵画・彫刻・衣服が100点を超える。開館は毎日10時〜18時。企画したのはエドワード・エニンフル。雑誌『i-D』や『Dazed and Confused』にコリーヌ・デイ、ナイジェル・シャフラン、ユルゲン・テラーが撮った写真が、「アンチ・ファッション」と呼ばれた見え方をつくった。トレイシー・エミン、サラ・ルーカス、ジェニー・サヴィルらの作品も並ぶ。16歳から25歳はTate Collectiveに無料で登録すれば、テートのどの展覧会も5ポンドで見られる。
💡 話せるタネきれいに撮らない、という撮り方がある。ピントを外し、照明を整えず、ポーズを決めさせない。それが1990年代に、広告の写真までひっくり返した。うまく撮れなかった1枚を捨てる前に、なぜそう見えるのかを考えてみるといい。
日本美術🇯🇵 京都・東山(10/6開幕)
国宝の絵巻は、2週間ごとに場面が入れかわる
京都国立博物館 平成知新館で10月6日(火)から特別展「源氏物語 王朝のかがやき」が始まる(〜11月29日(日))。京博で源氏物語の展覧会が開かれるのは約50年ぶりで、巡回を含めて約250件という過去最大の規模になる。現存最古の国宝「源氏物語絵巻」は、縦20センチあまりの画面に構図と色と線が凝縮された絵巻で、会期中は2週間ごとに場面を替えて見せる。藤原定家が校訂した写本「定家本」は、現存する5帖すべてがそろう史上初の機会だが、5帖が同時に並ぶのは11月3日(火・祝)から15日(日)までの2週間だけだ。国内外に分かれて所蔵され全体像がつかめないことから“幻の源氏物語絵巻”と呼ばれる「盛安本」も出る。紫式部の自筆本は1冊も残っていない。いま読める本文は、書き写した人たちの手を通ってきたものだ。開館は9時〜17時30分(入館は17時まで)、金曜は20時まで(入館は19時30分まで)。月曜休館だが、10月12日(月・祝)と11月23日(月・祝)は開館し、翌13日(火)と24日(火)が休みになる。観覧料は一般2,200円、大学生1,200円、高校生700円。
💡 話せるタネ同じ展覧会でも、行く日によって見られるものが変わる。紙や絹は光を浴びるほど傷むから、守るために出す期間を区切る。「いつでも見られる」ではないものに会いに行くとき、日付を調べるところから鑑賞は始まっている。
今週はここまで。
今週の6本は、置き場所の話で揃った。ゲームの制作資料はケースに入り、90年代の服は美術館の壁の横に並ぶ。禅の言葉はアニメの画面から入り、テレビの枠を離れた作家は鹿児島の野外美術館に作品を置いた。1000年読まれてきた物語の絵は、傷まないように2週間ごとに場面を替えながら出てくる。そして東京の街は、83日のあいだ展示室として使われる。作品を変えなくても、置く場所を変えれば見え方は変わる。どこに出すかを選べることは、つくる側の力のひとつだ。次号もお楽しみに。
編集:東洋美術学校 | study.to-bi.ac.jp ・ 全記事 出典リンク付きの要約です