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TOBI STUDY | 東美スタディ ・ 今週のアートシーン

#16原画108点は、燃えなかった

2026年9月18日号 ・ 残ったものと始まるものの6本 ・ 3分で読める
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2024年1月1日、能登半島地震の火災で輪島の永井豪記念館が被災した。焼失したと思われていた『デビルマン』『マジンガーZ』の原画108点は、燃え残っていた——11月、京都で公開される。そしてあす9月19日の土曜、前橋ではまち全体を会場にした第1回の国際芸術祭が開幕し、幕張の東京ゲームショウは一般公開日に入る。日曜の浅草には、一度消えた縦書きのハングルが4日間だけ帰ってくる。残ったものと、始まるもの——6本を3分で。

マンガ・開催決定🇯🇵 京都(11/28〜2027/1/11)

燃えた記念館から、原画108点が帰ってくる

京都文化博物館で11月28日から、特別展「令和6年能登半島地震復興祈念 不滅の力 永井豪 ―永井豪記念館リバイバル―」が開かれる(〜2027年1月11日)。『マジンガーZ』『デビルマン』『キューティーハニー』の永井豪は石川県輪島市の出身。ふるさとの朝市通りに建つ永井豪記念館は、2024年1月1日の能登半島地震による火災で被災した。だが建物の耐火施策が功を奏し、焼失したと思われていた原画108点とフィギュア類が見つかった。本展ではその被災当時に展示されていた原画・原稿やフィギュアに加え、永井豪がこの展覧会のために描いた描き下ろし(その企画のために新しく描くこと。過去作の再録と区別して使う言葉)のマンガ作品も展示される。輪島の復興を見据えた企画で、前売券の販売も始まっている。

💡 話せるタネ印刷されたマンガは何十万部も世の中に残る。でもペン入れされた原画は、世界に1枚しかない。「複製の時代に、一点ものが焼け残った」——原画108点という数字がこんなに響くのは、そのせいだ。
芸術祭・続報🇯🇵 群馬・前橋(あす9/19開幕)

第1回の芸術祭が、まちを80日間の会場にする

あす9月19日の土曜、「第一回 前橋国際芸術祭2026」が開幕する(〜12月20日、会期中の水曜は休み)。テーマは「めぶく。Where good things grow.」。会場は美術館だけではない——アーツ前橋を起点に、白井屋ホテル、まえばしガレリア、前橋シネマハウス、商店街など、まちなかの20以上の場所に作品が置かれ、歩いてめぐる芸術祭(美術館の外のまちや土地を会場に、一定の会期で開く美術の祭典。2000年代以降、日本各地に広がった)だ。参加作家には藤本壮介、蜷川実花、川俣正、渋谷慶一郎、最果タヒ、そして#13で紹介したマルタン・マルジェラの名前も並ぶ。チケットは一般3,000円・学生2,000円、高校生以下は無料。

💡 話せるタネ芸術祭の楽しみは「宝探し」に近い。地図を片手に、ホテルのロビーや商店街で作品を見つけて歩くうち、ふだん素通りしていたまちの風景そのものが違って見えてくる。高校生以下無料は、その体験への招待状だ。
ゲーム🇯🇵 千葉・幕張(一般公開 9/19〜21)

30周年のゲームショウは、史上最長の5日間

幕張メッセで「東京ゲームショウ2026」が開催中だ。30周年の今年のテーマは「史上最長、遊びづくしの5DAYS」。9月17日・18日のビジネスデイ(一般客を入れず、業界関係者の商談や取材のために開く日)に続き、あす19日の土曜から21日の月曜まで、3日間の一般公開日になる。大手の新作だけでなく、少人数チームの作品が並ぶインディーゲームの企画コーナーも用意されている。

💡 話せるタネ会場をまるごと「デザインの展示場」だと思って歩いてみよう。キャラクター、ロゴ、画面のUI、ブースの空間づくり——目に入るほぼすべてが、誰かの「絵とデザインの仕事」でできている。
マンガ🇯🇵 京都(開幕済・〜2027/1/19)

ローマ字の“Manga”には、40年の歴史がある

木曜9月17日、京都国際マンガミュージアムで「Mangaと育った子どもたち:ヨーロッパにおけるManga文化の40年」展が始まった(〜2027年1月19日)。開館20周年を記念する企画展(常設の展示とは別に、テーマを立てて期間限定で開く展覧会)で、フランス、ベルギー、スペイン、イタリア、ドイツの5か国を対象に、1980年代末から約40年におよぶ日本マンガ受容の歴史をたどる。タイトルの“Manga”はローマ字——受容の過程で生まれた独自の特徴を尊重して、ヨーロッパの人々から見た日本スタイルのストーリーマンガをこう表記した。ヨーロッパ出身の作家約30名による複製原画約100点も並ぶ。展示は無料(ミュージアムの入館料は別に必要)。あす・あさっての京まふでは、ここも会場のひとつになる。

💡 話せるタネ「マンガ家になりたい」のライバルは、もう日本国内だけじゃない。フランスやドイツには“Manga”を読んで育ち、いま自分の作品を描いている作家たちがいる——約30名の複製原画100点は、その実物の証拠だ。
タイポグラフィ🇯🇵 東京・浅草(9/20〜23)

500年つづいた縦書きが消えて、また戻ってくる

日曜9月20日から23日までの4日間だけ、浅草のギャラリーBook&Designで「ハングルの縦組み」展が開かれる(11:00〜19:00、最終日は17:00まで)。ハングルは15世紀の創製から約500年、縦書きで組まれてきた文字だ。1900年ごろから西洋式の横書きが広がり、1945年には教科書が横組みになった——その後の50年で、縦書きは韓国の日常からほぼ消えた。本展は文教大学の徐慧さんの企画で、40名を超えるデザイナーが「これからの縦書きハングル」の書体とレイアウトを持ち寄る。文字を選び、並べ、行間や字間を整えて紙面を組み上げる組版(くみはん。文字を配置して紙面・画面のかたちに組む作業)の展覧会だ。

💡 話せるタネ日本語が縦にも横にも組めるのは、世界では当たり前のことじゃない——隣の国の500年と、消えるまでの50年がそれを教えてくれる。文字をどの向きに組むかは文化の選択で、デザイナーは、消えた選択肢を取り戻す側にも立てる。
この記事の用語:組版
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現代美術🇯🇵 東京・赤坂(11/6・7)

一枚の抽象画が、動く映像と音楽になる

現代美術のゲルハルト・リヒターと、現代音楽のスティーヴ・ライヒ。ふたりの巨匠による映像・音楽作品《Moving Picture (946-3) Reich/Richter》が、11月6日(金)・7日(土)に東京・赤坂の草月ホールで日本初演される。もとになったのは、リヒターが2016年にスキージ(板状の道具で絵の具を画面にのばし、引きずり、削り取る技法。リヒターの抽象画を象徴する道具)で描いた一枚の抽象画。映画監督コリーナ・ベルツとともにそれを写真で細かく分解し、分割・鏡像・再構成して、絶えず変化しつづける映像に変えた。そこにライヒの音楽が「反復と少しずつの変化」という共通の原理で呼応する。世界初演は2019年のニューヨークで、ライヒが90歳を迎える今年、日本に届く。拠点を持たない新しいアートプロジェクト「No Centre」の最初のプログラムでもあり、全席指定8,000円のほか学生席3,000円が用意されている。

💡 話せるタネ画家は筆ではなくスキージで、作曲家はメロディではなく反復で——ジャンルが違っても、ふたりは「同じ構造の言葉」で対話している。絵の人にも音の人にも、境界線の向こうに仲間がいる。
今週はここまで。
前号で「土曜は開幕ラッシュ」と書いたが、まだ足りなかった——あす9月19日は前橋の芸術祭が開き、幕張は一般公開日に入り、日曜の浅草には縦書きのハングルが待っている。そして今週の6本は、時間の長さの話でもある。500年の縦書き、40年のManga、30年のゲームショウ、90歳の新作、焼け残った一点ものの原画——長くつづくものは、始めた人と、残すと決めた人がいたから残っている。きみが始めるものも、たぶんそうだ。次号もお楽しみに。
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